「カナノヒカリ」 877ゴウ (1996ネン 4ガツ)

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市町村名はカナ書きが望ましい(2)
〜「あきる野市」と「鹿嶋市」〜

                                             フジワラ タダシ 



  3月号でも ふれたが、昨年の 9月ツイタチ、東京都の 多摩地区に ある 秋川市と 五日市町が 合併して 「あきる野市」が うまれた。
  「あきる」と いうのは この 地域を しめす ふるい ナマエで、ゲンザイも 「阿伎留神社」や 「秋留台地」など ひろく とどめられて いる。(「あきる」は 漢字では 「阿伎留」、「秋留」の ホカ 「阿岐留」、「阿岐瑠」とも かかれ、また ふるくは 「畔切」とも かかれた。)それに おなじ 多摩地区の 「武蔵野」に ならって 「野」の 字を くわえて 「あきる野市」と いう あたらしい 市の ナマエが つくられた と いう。
  1字 漢字が はいるとは いえ カナが つかわれた ことは 大変 よろこばしい ことで あった。こう すれば だれでも たやすく かく ことが できるし、よみまちがえられる ことも ない。
  漢字で かかなければ 意味が わからない などと いう ヒトは いないと おもうが、念の ため 説明を すこし くわえよう。
  「あきる」と いう 地名の 由来で あるが、これに ついては いくつもの 説が ある。たとえば、
1 この 地域を ながれる カワ(イマの ヨビナは 「秋川」)が しばしば ハンランして タンボを ながした ため 「畔切川」と よばれるように なったのが オコリで ある と いう 説。
2 「畔切」を 「アゼを ひらく」 ことと 解釈し、「土地を 開拓した カミ 「畔切神」が まもる トチ」を 意味する と いう 説。
3 「コドモの ムラ」を 意味する と いう 説。(ふるい 歴史 を もつ 神社 「阿伎留神社」は オオクニヌシノミコトの コドモ アイスキタカヒコネカミを まつって いる。)
4 シラギから やって きた メガミ 「アカルヒメ」に 関連が ある と いう 説。
5 「アシの しげった ミチスジ」を 意味する アイヌ語から きて いると いう 説。
などで ある。(*) イマの 段階では、どの 説が ただしいか 断定するのは むずかしいようで ある。
  いずれの 説が ただしいに せよ 「阿伎留」の 字も 「秋留」の 字も 「あきる」と いう ナマエの 由来を あらわした ものでは なく、ただ オトを しめすだけに すぎない ことが わかる。だから わざわざ むずかしい 漢字を つかわず、「あきる」と カナを つかった ことは 適切な 判断で あった と いえる。
  モチロン 漢字が その 地名の 由来を あらわす バアイも あるが、ただしく よんで もらえるとは かぎらない。まちがって よまれれば 混乱を まねく コトに なる。地名は カナガキするのが のぞましいので ある。

  あきる野市が うまれた その おなじ ヒ、茨城県では Jリーグの 鹿島アントラーズの 本拠地として 有名に なった 鹿島町と 鹿島町に トナリあう 大野村が 合併して 「鹿嶋市」が うまれた。しかし この あたらしい 市の ナマエは スンナリと きまった ワケでは なかった。はじめ 鹿島町の 方では 「鹿島市」を あたらしい 市の ナマエと したい カンガエで あったのだが そうは いかなかった。すでに 佐賀県に 「鹿島市」という 市が あったからで ある。自治省は おなじ ナマエは 混乱を まねく オソレが ある との 理由で 難色を しめし、佐賀県鹿島市も つよく 反対したので ある。結局、「島」の 字を 「嶋」に かえ、「鹿嶋市」と する ことで 妥協が 成立し、解決を みた。
  しかし で ある。ワタシには よい 解決方法で あったとは おもえないので ある。
  そもそも これだけ 市の カズが ふえて いるのに おなじ ナマエの 市が フタツ あっては いけない と いうのが 無理なのでは ないか。土地の ナマエと いう ものは その 土地の ヒトに とっては 愛着の ある もので あるから、そのような 理由で ナマエを かえなければ ならないと したら、それは 納得しがたい ことだろう。
  さらに 理解に くるしむのは 字体を かえれば よい と いう カンガエカタで ある。「嶋」は 「島」の ふるい 字体で ある。つまり この フタツは おなじ 字で あって、デザインが ちがうに すぎない。デザインを かえれば ちがう 字と みとめられる と いう ことが ワタシには わからない。
  一体 「嶋」の ような ふるい 字体を つかう ことに 問題は ないのだろうか。オオヤケの 文書では あたらしい 字体を つかうのが 原則の はずで ある。タシカに 固有名詞は その 原則の 対象とは しない ことに なっては いるが、それは すでに ある 固有名詞は ニワカには かえがたいからでは ないか。
  ふるい 字体を あたらしい 字体に かえる と いうのなら わかる。そう すべきで ある。今回の バアイは その 逆を おこなって しまったので ある。
  おなじ 字を つかうのが いけないのなら、カナの ナマエに すれば よかったので ある。「カシマ市」 または 「かしま市」と。鹿島アントラーズの ホーム・スタジアムの ナマエ だって 「カシマサッカースタジアム」と カナガキして いるので あるから、こう した 方が むしろ したしまれやすいのでは ないだろうか。無理して 漢字を つかう 必要は なかったので ある。
  市に 昇格した ことは おめでたい ことで あったが、このような ナマエに なって しまったのは 残念な ことで あった。

  今後も 合併などで アラタに ナマエを きめる 市町村が あるだろうが、ゼヒ カナガキの ナマエを 採用するよう 運動を すすめて いきたい もので ある。


  (*)秋川市教育委員会 社会教育課 市史編さん室 企画編集 『秋川市地名考』(秋川市教育委員会 1983年) に よる。


〔原文は、「カタカナひらがな交じり文」〕


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