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Itikawa Zirô Miti ― この本の表紙にはこう書いてある。そう、これはすべてローマ字で書かれた本である。それだけでも人を驚かすことであろうが、作者の
Itikawa Zirô(市川次郎)氏もまた個性あふれる異能の人である。
彼は、1965年生まれ。早稲田大学大学院の修士課程を修了したあと、ヘビー級のプロボクサーとしてデビューし、今もなお現役である。また、シンガー・ソング・ライターであり、タレントであり、そして2018年10月、この本を出して作家としてもデビューをはたした。この1冊で日本の文字と言語を大きく変え、日本の社会と歴史そのものを変えてみせる、と気炎を上げる情熱家である。
内容は、主人公と小学校低学年の女の子との間のつつましやかな――しかし主人公にとっては生涯忘れることのできないであろう――心の交流を主旋律として、自身の歩んできた道を描いた私小説である。また漢字廃止について論じたエッセイなどもおさめられている。
この本を見て一般の人がまず思うであろうことは、はたしてローマ字という表音文字で現代の文学作品が作れるのかということであろう。その答えを出すのは読者自身である。ぜひ先入観を持たずに読んで欲しい。その答えがどうであれ、時間とカネのムダであったとは決して感じないだろうと思う。日本語表記の問題を超えた味わいがある。
わたしは、ローマ字界にも漢字廃止をおくすることなく主張するますらおが現れたこと、表音文字で作品を生み出す力をもった作家が現れたことを心から喜び、今後の活躍を期待しているのである。
発行:デザインエッグ(株) ISBN978-4-8150-0815-4
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(『カナノヒカリ』 963ゴウ 2019ネン フユ)