韓国の漢字
キム ハエ セオング
韓国の新聞には固有名詞などまだ漢字が残っていますが,朝鮮日報はこんど新聞としては初めて日本式の漢字の略字90字を正式に採用しました。しかし,Hangeul(韓国文字)学会においては漢字の併用とか漢字の略字の採用とかは問題ではなく,もっと大事なこととして,漢字の後退と漢字の廃止をぐいぐいと推し進めております。
漢字の後退というのは,現におこなわれている漢字語を漢字であらわさず Hangeul 記号でその音読のみを表現しますが,語の意味は温存されます。
漢字の廃止というのは,現に使われている漢字語そのものを Hangeul であらわし,同義語(synonym)である純韓国語(音声語)をもって おきかえることです。われわれは,この作業を Urimaal Sunhwa(ウリマァル スゥンホワァ)つまり,韓国語の純化とよんでいます。
つい先月、「わが国の地名は,純韓国語(Urimaal)で定むるに如かず」という命題のもとで,Hangeul 学会の建議書('83年3月31日)が各関係当局者に出されたばかりであります。
現在の韓国々内の地名では,漢字語以前の話し言葉を開発することです。
要するに,これは漢字の形象をそのまま残すことなく,純音声語になりうる Hangeul でこれをあらわすため徹底した対策をおこなうことであります。したがって「漢字の略字」など はびこる余地が あるはずがございません。
Hangeul 学会の運動は 韓国民族自身のための言語に対する文化運動であり,また,文字改革でもあります。
韓国では,いま歴史的文献以前のあらゆる分野・部門の話し言葉――漢字漢文のために失われた言葉――を開発することにおおわらわです。これも Hangeul という音声文字があってのことであり,これこそ文化的な賜物であるとおもいます。
これらの文化的な行為は,漢字では おもいもよらないことです。この言語改革がなしとげられた あかつきには Baedalmaal(韓国古語)は韓民族のみならず日本語はもとより世界諸言語のために貴重な資料を提供できると信じております。
韓国では漢字全廃,Hangeul 専用論がますますさかんであり,最近は小説など文学作品も Hangeul 専用がほとんどです。
(『カナノヒカリ』 732ゴウ 1983ネン 7ガツ)
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