「カナノヒカリ」 937ゴウ (2007ネン アキ)

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国語国字問題Q&A

カタカナ語がハン濫したのは漢字制限が原因か?

                                             ユズリハ サツキ 


   
   現在、日本語には カタカナ語が 氾濫(はんらん)して いるが、これは 戦後の 漢字制限に よって、漢語が 衰退した ことが 原因では ないか。

  
 漢字制限が 「カタカナ語」の ハンランの 原因だ、と いう 主張は 漢字擁護派の ヒトビトに より くりかえし なされ、漢字制限に 対する 攻撃の 材料に されて きました。しかし このような 主張には、はたして 根拠が あるの でしょうか。

  まず 指摘して おきたい ことは、カタカナ語と よばれる ものは 戦前から、つまり 漢字制限が おこなわれる マエから、カズおおく つかわれて いた と いう 事実です。たとえば、バター、チーズ、レコード、トラック、ピアノ、バイオリン、ビール、ボート、ダンス、ペン、コンサート、ストライキ、エチルアルコール、サーベル、カメラ、モダン、エレベーター、ライオン、モーター、ドラマ。

  これらは みな 戦前から つかわれて いる カタカナ語 ですが、いずれも 漢語で 乳酪、乾酪、音盤、貨物自動車、洋琴、提琴、麦酒、短艇、舞踏、洋筆、演奏会、同盟罷業、酒精、洋剣、写真機、現代的、昇降機、獅子、発動機、演劇 と あらわしうる もの です。(その おおくは 現在の 常用漢字にも とりいれられて いる やさしい 漢字で ある ことにも 注意して ください。)

  外国語を あたらしい 漢語を つくって 訳すのでは なく、そのまま カタカナで かきあらわす と いうのは 漢字制限が おこなわれて いない 時代から ひろく みられた 現象なの です。つまり 漢字制限が カタカナ語の ハンランの 原因で ある などと いうのは まったくの 見当チガイ なの です。

  しかし カタカナ語は 戦後に なって、ふえる イキオイが ました ことも 事実 です。これに ついては 漢字制限が 多少なりとも 影響して いるのでは ないか と おもう ヒトが いる かも しれません。

  では、戦後 あらわれた カタカナ語に ついて、それらが 漢字制限に よって 漢語ヅクリが さまたげられた 結果 うまれた もので あるか いなか を かんがえて みましょう。

  おもいつく ままに 比較的 あたらしい カタカナ語と 漢語の 訳語を あげて みます。マルチメディア:複合媒体、バイオテクノロジー:生物工学、リストラ:再構築、インフラ:経済基盤、アニメ:動画、ワープロ:文書作成編集機、コミュニティー:地域社会,共同体、アイデンティティー:自己同一性、トライアスロン:三種競技、キャッシュ・ディスペンサー:現金自動支払機、バーチャル・リアリティー:仮想現実感、エイズ:後天性免疫不全症候群、アメニティー:快適度、シンセサイザー:電子音合成装置、パートタイマー:非常勤勤務者、フリーズ・ドライ:凍結乾燥、エアコン:空気調節装置、スプリンクラー:散水装置、フォーラム:公開討論会。

  かならずしも 適切な 訳語では ないかも しれませんが、大概の バアイ、常用漢字の 範囲で あらわしうる ことは おわかりの ことと おもいます。

  かりに 漢字制限を ゆるめて つかえる 漢字を 2倍に したと すれば、漢字 2字で 造語すると して、つくりうる 漢語は 4倍に なり、ずっと 漢語を つくりやすく なる リクツでは あります。しかし、実際には 当用漢字や 常用漢字は つかわれる 頻度を かんがえて えらばれたの ですから、それだけでも タイテイ まにあうの です。それに 常用漢字 2字の クミアワセだけで 3,783,025とおりも あるの です。

  戦後 カタカナ語が ますます カズを ましたのも 漢字制限の ためとは いえません。ウエに みて きたように、漢字制限の ために 漢字の 造語力が おとろえて、それが カタカナ語が はびこる 原因に なったのでは なく、別の 原因に よって 外国語が このまれるように なり、漢語に 訳す 意欲が おとろえたの です。それは、いうまでもなく、ヨーロッパや アメリカとの 文化的 政治的 交流から うまれた 現象なの です。


  ※ この 記事は、「カタカナ語がはびこるのは漢字制限のせいか」(キクチ カズヤ 「カナノヒカリ」 1995年 1月号)を みじかく まとめた もの です。