「カナノヒカリ」 914ゴウ (2002ネン フユ)

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日本語をバリアフリーのコトバに(その3)

〜外国人に冷たい日本語の書きコトバ〜

                                             キクチ カズヤ 


   
  ワタシタチ 日本人(ここでは、日本語を 母語と している スベテの ヒトビトを 代表させて 「日本人」と かきあらわす ことに します。)に とって、たとえば 新聞の 記事程度の 日本語を よむ ことは、そう むずかしい ことでは ありません。しかし、日本語を アラタに まなぼうと する 外国人に とっては、日本語の カキコトバを ならいおぼえるのには、相当の 困難が ともないます。その原因は いうまでも なく、漢字の ムズカシサに あります。
  日本語は コトバ ソノモノと しては、決して まなびにくい コトバでは ない と よく いわれます。実際、日本語を リュウチョウに はなす 外国人の タレント などは、テレビでも よく みます。しかし、日本語の カキコトバを 日常生活に 不自由の ない までに ミに つけている 外国人は、まったく いない ワケでは ありませんが、例外的と いって よいでしょう。日本人が、ある 程度の 漢字を よみ、かく ことが できるのは、コドモの ときから ボウダイな 学習時間を ついやし、大変な 努力を しいられて、アタマに たたきこまれて きたからで、そうで なければ、カズが おおく、しかも ツカイカタの 複雑な 漢字を おぼえる ことは、至難の ワザと いえるでしょう。
  オコトワリして おきますが、ワタシは 日本語を 国際語に するために、障害と なる 漢字を とりのぞかなければ ならない などと 主張している ワケでは ありません。(そもそも 英語で あろうと、日本語で あろうと、民族語を 国際語として つかおう などと いう カンガエは あやまって いると おもって います。) コトバや 文字の 問題は、あくまで それを 母語とし、つかっている ヒトビトに とって、どう あるべきか と いう ことで ある ハズです。
  にも かかわらず、外国人と 漢字の 問題を ここで とりあげるのは、外国人に とっての 漢字の 問題は、日本人に とっても 共通する 問題で あるからです。(漢字が 日本語に とって、また 日本人に とって、いかに 有害な もので あるかに ついては、すでに 完璧に 論証されて いますので、ここでは ふれません。)
  外国人で あっても、一定の 期間 日本で 生活するならば、日本語の ヨミカキが できた ほうが くらしやすい でしょうし、自分が すんでいる クニの コトバを おぼえるのは 礼儀とも いえるでしょう。しかし、日本語の カキコトバで もちいられる 漢字は 日本人に とってさえ ヤッカイな ものです。まして、外国人に とっては、「悪魔の文字」 ソノモノでしょう。特に、「漢字文化圏」に 属さない ヒトビトは ハジメから まなぶのを あきらめて しまう ことが おおいのでは ないでしょうか。
  実際、漢字を おぼえようと する 外国人の 苦労は ナミタイテイでは ありません。ある 日本に すむ ベトナム人は、13年も かけて ベトナム人の ための 漢字辞典(*1)を つくり、数年マエに 出版しました。日本で 生活する 同胞に 大変 よろこばれた ようですが、この 辞典に おさめられた 漢字は 小学校で ならう 1006字。コレ 1冊を マスターしても、日常生活で 必要な 漢字の 半分にも みたないでしょう。
  特に 心配されるのは、将来を になう コドモタチの ことです。日本で はたらく ミナミ・アメリカなどの 日系人の コドモが 日本の 学校に 転入学した バアイなどは、やはり 漢字が ツマズキと なる ことが おおいようです。漢字が わからなければ、「国語」だけで なく、算数も 理科も 社会科も わかりません。
  ところで、日本に すむ 外国人の 日本語の ヨミカキの チカラは どの 程度の ものなのでしょうか。これを しるには、昨年(2001年)に 文化庁が 実施した 調査 「地域の日本語教室に通っている在住外国人の日本語に対する意識等について」(*2)が 大変 参考に なります。これは、日本語教室に かよっている 外国人 600人を 対象に おこなった 調査で、その ナカに、ツギの ような 項目が あります。

日本語の文字やローマ字を読む力(複数回答可) 〔原文は グラフつき〕
  平仮名が読める       84.3%
  片仮名が読める       75.2%
  ローマ字が読める      51.5%
  漢字が少し読める      48.5%
  漢字が読めて意味もわかる  19.6%

日本語の文字やローマ字を書く力(複数回答可) 〔原文は グラフつき〕
  平仮名が書ける       84.0%
  片仮名が書ける       73.7%
  漢字が少し書ける      49.4%
  ローマ字が書ける      49.1%
  漢字が十分に書ける     17.6%

  この 結果を みると、外国人に とって、カナを おぼえるのは むずかしい ことでは ないらしい ことが わかります。カズは おおく ありませんし、表音文字ですから、おぼえる 気さえ あれば、たやすく ミに つけられるでしょう。
  日本語の ヨミカキを まなぶ ウエで、障害に なって いるのが 漢字で ある ことは アキラカです。漢字の ヨミカキの できる 外国人が 意外に おおいようにも 感じられますが、これは この 調査の 対象者が 日本語教室に かよっている、つまり 日本語の 学習に 相当 熱意の ある 外国人で ある こと、また、対象者の 国籍などは 不明ですが、いわゆる 「漢字文化圏」出身者が かなりの ワリアイを しめて いる ためと おもわれます。非「漢字文化圏」出身者だけに かぎれば、おそらく ゼロに かなり ちかい 数字に なるのでは ないでしょうか.
  一方、ローマ字に ついては、この 結果に 関して 「意外に少ない」と いう 修飾語つきで 報告されて います。ワタシは、「意外に少ない」 理由として、(1)ローマ字は 固有名詞を のぞいては、現実には 日本では ほとんど つかわれて いない。(2)ローマ字(ラテン・アルファベット)以外の 文字を もちいる 言語を 母語と する ヒトビトも 決して すくなく ない。(3)ローマ字は 相対的には 国際性の たかい 文字で ある とは いえ、その「国際性」とは、実は、その「字形」に ついて いえる ことで あって(それも、字上符などを のぞいての こと)、「音」は 共通で ない。と いう ことが あげられる と おもいます。
  今回の 調査結果に ついて、文化庁の ある 職員は、「公共施設では漢字にローマ字の併記が多いが、ひらがなも書いたほうが親切」と いって います(「読売新聞」 2001年8月6日)。しかし、おなじ 日本語に 3トオリもの 表記を するのは 不経済です。日本人と、日本の 社会に とけこんで 生活して いる おおくの 外国人が ともに 理解する 文字は、カナなのですから、カナだけの 表記で よいのでは ないでしょうか。モチロン、一時的に 日本に 滞在して いる 外国人の ホトンドは、カナが よめない でしょうが、日本語 ソノモノも しらないの ですから、ローマ字で かかれた 日本語を みても 意味は 理解 できません。かれらの ためには、むしろ 外国語(残念ながら エスペラントは まだ 普及して いないので)を そえる ほうが、ずっと 親切でしょう。たとえば、「KOBAN」では なく、「こうばん / POLICE BOX」の ように。
  カナモジカイが 主張しているように、漢字を 廃止すれば、外国人に とっての 日本語の カキコトバの 問題も 自然に 解決します。当面は 漢字廃止の 実現は 期待できませんが、せめて 外国人ムケの 表記は できるだけ カナガキを する ように すれば、外国人に とって 日本語の カキコトバに 対する バリアは イクブンなりとも ひくく なるのでは ないでしょうか。

*1 ド・トン・ミン氏 あらわす 『千六の漢字』
*2 調査結果の 全文は、文化庁の ホームページで みる ことが できる。
   (http://www.bunka.go.jp/7/2/2-H-12-1.html)


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