「カナノヒカリ」 909ゴウ (2000ネン アキ)

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国語審議会試案 エノ イケン 


   
  文化庁 デワ ダイ 22期 国語審議会 カラ シメサレタ 委員会試案 ニ ツイテ サマザマ ナ ホウメン ニ イケン ヲ モトメテ オリ,カナモジカイ ニモ ソノ レンラク ガ アッタ ノデ,ツギ ノ トオリ イケン ヲ オクッタ.(コノ タビ ワ,ツゴウ ニ ヨリ,ワタナベ カイチョウ ガ マトメタ.)

1 「現代社会生活における敬語表現」に対して

  全体的に,内容そのものは おおむね よく まとめられていると かんがえます。「敬語表現」という かんがえかたの提唱にも賛成です。ただ,「国語施策」のありかたについての案としては,「策」を もうすこし具体的にしたほうが よいのではないでしょうか。ことがらの性質上 具体的な「策」をきめる ということとは なじみにくいことも よくわかりますが,「IV 留意点」の〔具体的な留意点〕の部分は,ややはっきりしないようにおもいます。内容は,もっともなこととはおもいますが,具体的には どうすればいいのか,もう一歩ふみこんだ提案があれば わかりやすいと おもいます。
  IIでも,「5 商業場面での(における)ことばづかい」については,たとえば「おあずかり(します)」を「いただき(ます),ちょうだい(します)」の意味につかったり,「〜します,〜いたします」で 十分なところを「〜させていただきます」とすることも おおいなど 具体的な事例を しっかりあげるべきです。「6 マスコミュニケーションでのことばづかい」では,いわゆる「うらんかな」のために オオゲサな,あるいはドギツイ表現がめだち,さらには事実を報道する場面でも事実から はなれた(ときにはウソの)表現さえ みうけられることも,はっきり指摘してほしいです。(これは,答申案ではふれていない政治関係でも同様でしょう。)
  IV留意点では,うえにあげたことのほかにも,よくかんがえていただきたい点があります。〔基本的な留意点〕で「人間関係の多様化」におうじて 敬語表現が「多様化している」現状は しかたがないとしても,これを無批判的に みとめるような「案」の態度には疑問があります。こうした態度の中には,かえって こまかい上下関係,男女,そのほかによる差別的習慣を のこす・助長するなど,戦後努力してきた 個人ひとりひとりを尊重するという民主主義とは ギャクの方向へすすむ危険性も ひそんでいると おもうからです。また,Iにありました「平明で,的確で」あることに そぐわないことにも なるとおもいます。また,「慣用に照らして過不足なく」ともありますが,「好ましくない慣用はあらためるべきである」ことも はっきりいうべきだと おもいます。
  あくまでも 民主主義の原則や 平明,的確な表現を まもり,そだてることに 十分配慮した提案を していただきたいと おもいます。
  最後に「案」の文章の いいまわしについても,わずかですが,もっと平明な表現にあらためたほうが いいと おもわれる部分がありますので,例をあげておきます。あらためたほうが 格式張らず,また全体の調子とも 調和がとれると信じます。「〜における」(1ページほか)「有する」(2ページ)「婉曲」「阻害する」(5ページ)「のみならず」(7ページ)→ちなみに,「〜での」「もつ」「とおまわし」「さまたげる/そこなう」「ばかりでなく」などと あらわすことが かんがえられます。

2 「表外漢字字体表」に対して

  基本的なかんがえかた,また字体・書体・字形についてのかんがえかたは おおむね結構だと おもいます。「I 1(1),3,4」については特に適当であると おもいます。けれども,1(2)(3)については,「表外漢字をつかいすぎることは さける必要がある」ことをもっとつよく だすべきであるとおもいます。そして,それでこそ「常用漢字表の意義は,かえって高まっている」ということばが いきてくるはずだと おもいます。「ある程度の」「使用を想定」している「表外漢字」というものが,じつに常用漢字の50%以上にものぼる1022字であるというのでは,そのことばの真実みも うすれます。
  ようするに,「2 字体表の性格」を「法令,……一般の社会生活のため」としたことに問題があると おもいます。そうではなく,単に「常用漢字外の漢字のうち これまで一般の社会生活でも 比較的おおく つかわれていた漢字の字体のよりどころをしめす」ことに とどめておくべきだと おもいます。「案」のような性格づけでは,準常用漢字の制定と うけとられかねません。「準常用漢字の制定ではないのだ」ということがはっきりわかるような表現をおねがいいたします。また,このようにかんがえてきますと,「簡易漢字字体」をみとめるというのも いらないことではないでしょうか。(3部首のあつかいは 結構だとおもいます。)

3 「国際社会に対応する日本語の在り方」に対して

  I,IIについては おおむね結構だとおもいますが,国際的な「少数言語・多文化尊重」について ふれられているなか,日本国内にある「少数者言語・文化」であるアイヌ語・アイヌ文化について ふれられていないことは 問題だとおもいます。いわばそとに めをむけた今回のテーマとは別の問題ではあると おもいますが,ぜんぜんふれないというのも おかしいとおもいます。
  IIIの全体の趣旨も たいへん結構だとおもいます。それだけに1「表」に示された「とりあつかい」については,ただ分類のワクをしめすだけでは不十分というか,あまり意味がないのでは ないでしょうか。語例をもっとおおくして,わたしたちの指針として役だつものと していただきたいとおもいます。(今回の「表外漢字字体表」にちかいかたちでもいいのではないでしょうか。)
  III2「姓−名」順については 当然とおもいますが,ローマ字のつづり(特に外務省の態度)について ほうっておいて いいのでしょうか。ヘボン式,長音のかきかた(hをみとめる)など 無視できない問題だとおもいます。

                              以上

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